The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『The DevOps 逆転だ!究極の継続的デリバリー』と『The DevOps 勝利をつかめ!技術的負債を一掃せよ』を読んで

『The DevOps 逆転だ!究極の継続的デリバリー』と『The DevOps 勝利をつかめ!技術的負債を一掃せよ』を読みました。3月の読書。

いわゆるビジネス・フィクションと呼ばれるジャンルの本。DevOps シリーズ3部作と呼ばれるシリーズで、創業100年近い自動車部品販売の企業が業績不振から華麗に立ち直るというストーリー。IT 版『ザ・ゴール』ともいうべきか(読んだことないけど)。

両者ともほぼ同じプロジェクトを舞台に描かれていて、登場人物も一部重複している。でも、パラレルワールド的な設定なのでどちらかだけ読んでも特に問題はない。『逆転だ!』(一作目)の方は IT 運用部門を舞台にしていて、『勝利をつかめ!』(二作目)の方は IT 開発部門を舞台に書かれている。自分はどちらかといえば開発が主軸なので「勝利をつかめ!」の方が身近に感じたかな。

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二冊とも主人公がこれでもかというくらい問題が山積みのプロジェクトに投入されるところからストーリーが始まる。障害が日常化している運用。まともにデプロイできないソフトウェア。立ちはだかる内部監査。参加して一ヶ月経過してもビルドさえできない開発環境。リリースマージに数日かかるコードベース。社運をかけ数年間で数千万ドルを投入した一大プロジェクトのリリースがうまくいかず大炎上。どう考えても巻き返せるようには思えない。

しかし、主人公達はあれやこれやと立て続けに対策を練ってプロジェクトを立て直していく。技術的負債の解消。継続的デリバリーの導入。マイクロアーキテクチャ化。コンテナ技術の利用。アジャイルの導入。クラウド化。コンテキストからコアの仕事へのシフト。 最終的には会社の業績をV字回復させて、主人公たちは共に CIO(将来の COO)と社内初の Distinguished Engineer になって大団円。

フィクションだからしょうがないけど取り入れる施策がことごとく上手くいくんだよね。 それはまぁいいとして何かを変化させる時にありがちな利害の対立や葛藤がほとんど描かれない(多少、描写はされたとしても数ページ後には解決している)。 ローパフォーマンスだった部門も数週間すると圧倒的なパフォーマンスを発揮するように大変化する。 そんなにすぐに変化できる組織だったら、そもそもそんな問題山積みにならないんじゃないの?と思ってしまった。

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全部の施策が成功するので先が読めてしまい、読み物としてはワンパターンで食傷気味だったかな。 自分には『闘うプログラマー』みたいなノンフィクションのほうが向いているみたい。 得られたものがあるとすれば、運用・開発における理想像とは?みたいな目指すべき場所はうっすらと認識できたかもしれない。

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