The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『WORLD WITHOUT WORK -- AI時代の新「大きな政府」論』を読んで

『WORLD WITHOUT WORK -- AI時代の新「大きな政府」論』を読みました。

AI や高度化するロボットによって、人間の仕事が奪われていく社会について論じた本。 歴史を振り返れば、産業革命などの同じような状況はあったが、そのたびに経済が成長して新たな仕事が創出されてきた。 筆者は AI の登場によって今度こそ人間の仕事が奪われていくと主張する。

それは一夜にして世界が変わるということではなく、じわじわと人間の仕事を浸食していく。 これまで富の分配を労働市場に頼っていたが、それが機能しなくなる。 その結果、今進んでいる経済格差がさらに急激に進むだろうと結論付けている。

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自分自身のキャリアについて考えたとき、当然、自分の仕事がいつまであるのだろうと考えることがある。 それに対してどうやってアクションしていくかということを期待して読み始めたけど、個人がどうするべきかということはあまり書かれていなかった。 それよりも、人間の仕事が減っていき労働市場によるパイの分配が機能しなくなる中で、社会はどうやってこの危機を乗り越えていくべきかということが書かれていた。 本を読みながら「我ながら視野が狭かったな」と少し反省した。

本書の後半ではいわゆる大きな政府が必要ということを明確に主張してるのは興味深い。 最近はそちらよりの主張の本を読むことが多くて、自分はあまり大きな政府派じゃなかったけど少し考え直した。 どちらかといえば経済成長や市場原理を信じてきたけど、社会の状況を見るとそれだけじゃあまりうまくいかないのかな、と最近感じている。

むしろ、最近は経済成長や市場原理をあまりに声高に主張されるとちょっと身構えてしまう。 もちろん、計画経済みたいなのがうまくいくとは思ってないけど(本書もそういう論調)、一方的な経済成長・市場原理神話は崩れてきたのかなと思っている。 これまでうまく機能してきたことがこの先も機能するとは限らないしそろそろ何かアップデートが必要なのだろうな。

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