『How Google Works』と『グーグル ネット覇者の真実』を読んだ
グーグル関連の本を二冊読んだ。
『How Google Works』と『グーグル ネット覇者の真実』。
How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント
- 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ,土方奈美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/10/09
- メディア: 単行本
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- 作者: スティーブン・レヴィ,仲達志,池村千秋
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 単行本
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『How Google Works』の方はすでに数ヶ月前に読んでいて、ブログに書くつもりはなかったんだけど、友達に薦められて『グーグル ネット覇者の真実』を読んだついでにまとめて感想を書いておこうと思う。
『How Google Works』はグーグル元 CEO のエリック・シュミットをはじめとした経営陣による中の人から見たグーグルのビジネスについて書かれた本。 一方の『グーグル ネット覇者の真実』はテクノロジー系ライター、スティーブン・レヴィによる外の人から見たグーグルのビジネスについて書かれた本。
「外の人」と書いたけど、『グーグル ネット覇者の真実』は、中の人への膨大なインタビューや取材に基づいていて『つまり、インサイダーの視点をもったアウトサイダーになるのである。』と著者が豪語するように、読み応えのあるものになっている。
一つの企業について書かれているため必然的に同じエピソードについて語られるわけだが、当然、「中の人」と「外の人」という立場の違いがあるので、そこらへんの対比が面白かった。
ユーザーに焦点を絞る
『How Google Works』には、この時代に IT 企業として成功するためのノウハウがたくさん紹介されている。 個人的に一番響いたのが「ユーザーに焦点を絞る」という点だ。
事業の話をする時に、「ビジネスモデルが~」、「収益構造が~」という話になりやすいのはどこの企業も同じだと思う。 おそらく、目に見えない・理解しにくい「ユーザー」についての話よりも、目に見えやすい・理解しやすい「ビジネスモデル」を話す方がきっと簡単だからだと思う。
「ユーザー」は大抵、意味不明だ。 よく分からないサービスが成功したりするし、変なページのアクセス数が高かったりする。
一方、「ビジネスモデル」や「収益構造」は大抵、理解可能だ。 有名な理論があったりするし、そもそも自分たちのこと(収益)を中心に話が進むからだ。
その結果、必然的に後者の話題が大きくなり、ユーザーがおざなりになってしまう。 この「ユーザーに焦点を絞る」というのは簡単なようで、相当に難しい。(そもそも、「ユーザーに焦点を絞れば後から収益はついてくる」という考え方なので、収益がついてくるまでは赤字の覚悟も必要だから)
ちなみにこの教訓は『グーグル ネット覇者の真実』でも言及されている。
近くスタートする予定の製品について概要を説明した後で、メイヤーが地元のエンジニアたちから質問を受けていたときのことだ。一人がこう尋ねた。
「製品化へのロードマップについてはわかりました。でも、収益化へのロードマップはどうなっているのですか?」
メイヤーの答えはけんもほろろだった。
「そういう考え方をしてはいけない」と彼女は言った。
「私たちは、ユーザーのことだけを考えればいいんです。ユーザーが満足してくれれば、収益は後から着いてくるものです。」
(文中のメイヤーとは、元 Google、現 Yahoo! Inc. CEO、マリッサ・メイヤー)
全体として、こういう耳が痛くなる教訓がたくさん書かれていて、特に科学的な考察に基づいているところがすごく好感を持てた。
昔、前職の会社の社長に「好きな経営者とかいないのか?」と飲み会で聞かれ、その時は「うーん、特に、、、」と答えたことがあった。 もし、その時にこの本を読んでいれば(当時はまだ刊行されていなかったが)、きっと、「エリック・シュミットですね。」と答えただろう。
邪悪になるな
もう一冊の方、『グーグル ネット覇者の真実』は読んでいくうちに、自分にとってのグーグルという企業の印象がどんどん変わっていった。
グーグルといえば、完全無欠の巨人、どんな問題もスマートに解決しているというイメージを漠然と持っていたが、実際には何度も失敗していて、多くの死んでいったサービスの亡骸の上にたっているんだと知った。
そして、絵に描いたような経歴を持つエリート達が、血反吐を吐きながら自分の限界に挑戦している様子が描かれていて、月並みだけど感銘を受けた。こういうレベルの人達でも、もがきながら仕事してるんだなぁと思うと少し勇気がわいた(対象となっている仕事レベルがそもそも段違いなのは置いておく)。
こんな感じで、序盤から中盤にかけてはエリート達が苦労しながらも限界に挑戦し、大成功する姿が描かれている。
一方、終盤にかけては、大きくなり力を持ちすぎたグーグルを、世間が警戒し始める姿が描かれている。
データを見てほしいと、グーグルの人はよく言った。客観的な事実に異を唱えることは、誰にもできない。 これがグーグルプレックスを支配している発想だったし、それはこの先も変わらないだろう。
しかし、グーグルが学習し始めたように――そして、ホワイトハウスにいるグーグルの思想的な分身も思い知らされ始めたように――何百万台ものグーグルのサーバーの外のリアルな世界では、データと論理だけで勝利を手にできるとは限らないのだ。
「ホワイトハウスにいる分身」とはオバマ大統領のこと。 グーグルと似た思想を持った大統領候補者として、多くのグーグルの社員が熱狂的にオバマ候補を支持する姿が紹介されている。 ただ、オバマ大統領もグーグルと同じように、大統領に当選後は世間から理解されず、支持を失っていったように自分は感じる。(本文中ではオバマ大統領のその後は言及されていないが)
グーグルの非公式の社訓である「邪悪になるな」。 この本を読んでいると、中の人たちは多くの場合「邪悪になるな」を根底に仕事をしているのは間違いないと感じられる。
それでも『「邪悪になるな」←(笑)』のように捉えられてしまうことが少なくない(何を隠そう自分もそういう捉え方をしていた)のは、お互いに利益を認めてもただ「理解し合えない」というだけで対立している構造がそこにあるからだろうか。
こういう理解しあえないで対立する構造ってグーグルに限らず、人間関係の小さい問題から、社会的な大きな問題にまで、何にでも顔を出してくるよなぁ、と社会の不条理を思い、なんとなくセンチメンタルな気分になりながら本を読み終わった。
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うーん、簡単に書こうとして結局けっこうな量になってしまった。。。
ささっとこういうのが書ける能力を身につけたい。